2013年3月16日土曜日

高橋大輔が見せたベテランの頼もしさ

コラムのご紹介です。

高橋大輔が見せたベテランの頼もしさ

世界フィギュア・男子SP


男子SPで日本人最高の4位に入った高橋。ジャンプにミスはあったが深みのある演技を見せた【坂本清】

 フィギュアスケートの世界選手権・男子ショートプログラム(SP)は、意外な結果となった。1位・パトリック・チャン(カナダ)、2位・デニス・テン(カザフスタン)、3位・ケビン・レイノルズ(カナダ)。戦前はチャン、羽生結弦(東北高)、ハビエル・フェルナンデス(スペイン)、高橋大輔(関大大学院)の4名が表彰台争いと予想されることの多かったこの大会だが、そのうち、SPのスモールメダルを手にしたのはチャンひとり。高橋は4位、フェルナンデスは7位、羽生は9位となった。

☆レベルアップした新プログラムで4位に踏みとどまった高橋

日本の3選手とも、それぞれジャンプミスによって、順位が抑えられた。日本勢で最初に登場した無良崇人(中京大)は、冒頭の4回転でトウをうまくつけずに1回転となった。本人曰く「こんなことは起こったことがなかった」という。しかし「(4回転の失敗後は)集中できたので良かった」と、フリースケーティング(FS)に良いイメージがつながるコメントを残した。

 冒頭の4回転で転倒、後半のジャンプもコンビネーションにできなかった羽生は9位。全体的にどこか元気がなかった。強い心を持つ17歳は、「(FSには)強くなって戻ってきて、リベンジしたい」と明日1日挟んだあとのFSに今季の集大成を見せるつもりだ。

 

 日本人3番目に登場した高橋は、2つのジャンプで回転不足となり点数が伸び悩んだ。それでも演技直後の表情は、集中したあとの清々しいものだった。高橋自身、「体調は万全ではなかったけれど、その中で自分のベストを尽くした。プログラムに気持ちを込めることができた」という。四大陸選手権から1カ月で、ステップなど格段にレベルアップした演技を見せてくれた。得点のうち、スケート技術や音楽との調和などを表す演技構成点もチャンにつづいて2位。確かに大人の深まりのある演技だった。そして、あと2日で27歳になる彼の演じる姿は、ただただ、頼もしかった。ジャンプミスがあってもちょっとやそっとでは崩れない。

 8回目の世界選手権。長いスケート人生で味わった辛苦を越えたからこその確かさで、魅せた。来年2月のソチ五輪を最後とすると、これが最後の世界選手権となる可能性が高い今大会。高橋は、その大会の半分を終えた。

☆高橋とともに気を吐いたベテラン ジュベールも好位置に


5位のブライアン・ジュベール(フランス)にとっても、今大会は最後となるかもしれない世界選手権だ。22歳前後がピークとも言われる男子シングルで、ジュベールや高橋のように長くトップレベルで戦える選手は、本当に少ない。SPでの4回転のコンビネーションにこだわってきた彼は、今日も、4回転+2回転を含めたすべてのジャンプを決めた。そして最終盤、観客に視線を送りながらステップをスタートさせると、プログラム終了まで観客を巻き込んだ。観客もジュベール自身も楽しい演技。ジュベールのジュベールたるところが凝縮された時間だった。

 来年2月のソチ五輪の出場枠がかかる今大会。日本男子が最大の出場枠「3」を手に入れるには、3選手のうち成績上位2人の順位の合計が13以下であることが求められる。大事な枠取り、そしてシーズンを締めくくるFSは、15日(日本時間16日)に行われる。

<了>

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